2012年09月19日

「本屋さん」は消えるのか

旧暦八月四日 癸未(みずのとひつじ) 秋の彼岸の入り

 読書週間はまだ先だけれど、読書週間の新聞広告企画への誘いとともに届いた、地方・小出版流通センターからの9月の通信に、こんな内容が記されていた。

 丸善の「松岡正剛の棚・松丸本舗」が9月で閉店と伝えられます。最近、独特の選書で、個性的な書店のニュースが多いのですが、たしかにどことなく魅力的ではあるものの日常的な経営を維持するのが可能なのかどうかと問われると、難しいのでは推察をせざるをえません。
 そんなとき 読売新聞の空想書店というタイトルのコーナーに 北大の中島岳志さんが「最近 個性的な本のセレクトショップが増えている。雑貨屋と融合したおしゃれな内装の店が多く 本のラインナップには店主の趣味が色濃<反映されている。<中略>客を選ぶ本屋に 私はあまり魅力を感じない。本屋は やはりみんなの空間だ。<中略>もし 可能ならば 新刊本だけでなく 古本も取り混ぜて売りたい。文庫本も 今ではあっという間に絶版になってしまう。出版社が本の命を粗末にするならばせめて本屋で大切にしたい。スピード感ばかりが求められる世の中で 本屋は時間を堰き止める役割を果たしたい」と記されていました。
 客を選ぶのではなく オープンなたたずまいでいることこそが やはり小売店の本質的役割を果たすことになるのではないでしょうか・・入り口には本日発売の雑誌が並び ベストセラーが平積みされたその奥にさりげなく本屋さんお奨めの本が並ぶ・・こんなすごく当たり前の本屋さんが なぜか懐かしい!再生して欲しい本屋さんの姿です。 (原文ママ)


 難しい問題です。中島さんという方の提言はたいへんよくわかるし、自分自身が実際に書店に行くときは、そういう本屋さんになる。で、悲しいかな、その典型は大型書店なんですね。スペースがないと、なかなかそうはできない。
 「雑貨屋と融合したおしゃれな内装の店」というのは、おしゃれかどうかは別として、ヴィレッジヴァンガードのような混在店のことを指しているのでしょうね。
 小さな書店では必定、売れ筋雑誌と話題の新刊書、ベストセラーしか置けない。それも、新刊やベストセラーは、常時売れ行きが確保できていなければ、取次店は配本してくれない。文庫や新書も新刊、近刊やロングセラーしか置けないから、当然、フルラインナップとしては揃わない。欠番だらけ。

 去年、近所の書店が廃業した。
 街の書店としては広いほうで、二階は全フロアがコミック、一階は雑誌と実用書、新刊書が目立つ位置にあり、売れ筋の文庫本や単行本を置いて、店外の路面側には週刊誌、という、よくある「街の本屋さん」だった。
 ただし、いわゆる「エロ本」が雑誌スタンドと平台の一画を占め、閉店前の二、三年は、雑誌売場の半分くらいを占めるようになっていた。店主に訊くと、「利益率がいい」とのことだった。
 隣にある「京都」の情緒をウリにしている旅館の女将などは、たいへん嫌がっていたし、こちらも、本はなるべく地元で買えれば、とは思うものの、雑誌などを買うときにも、少し離れたところにあって、一切、そういう本を置いていない書店を優先していた。
 そちらの書店のほうは、今も続けている。そこのオヤジさんは、「ウチは学校に教科書を販売しているから、ああいう本は置けない」と言っていたけれど、そういう体面だけの理由ではないだろう。ここは、さらにずっと小さなフロアで、もちろん二階もなく、廃業した近くの書店以上に、客が入っているのを見たことがない。
 高額の本を取り寄せて買うときには、ぜひここで注文したいと思う。けれど、近年の景気では、なかなかそういう機会がないんですよね。(嘆)

 本屋は今、そういう傾向にあるように、これからもさらに、「みんなの空間」と、そうではない、「わたしの好きな場所」とに、分かれるだろう。
 旧来からの店舗で、同じ販売スタイルを維持している書店は、まず、ほとんど消え去るはずだ。上記の店も、何かほかのことで稼いでいるのかもしれない。
 量販店と、セレクトショップ。
 これは、ほかの業種と共通する。今や、書物が特殊な「商品」として意識される時代ではなく、その販売に携わる者に特別な延命が与えられてはいない。規模で売るか、魅力で売るかの両極に分かれざるを得ないのは、商品の内容にかかわらず、必然的な時代の流れなのだ。ウェブ販売のアマゾンなどは、現在ある、量販の究極の形態だろう。

 まだ、このあたりの予測は整理できていないが、電子書籍の普及が進めば、「書物」の量販はさらに加速し、リアルの大型店舗も、店頭の形態は変わるだろう。
 書籍を扱う小型店舗は、セレクトショップとしても、「本」を扱うというより、独特の「伝統工芸」としての魅力、質感を持つ「書物」という趣味の世界を扱う、という感覚になるだろう。

 地方・小出版流通センターからの通信には、政府の電子化推進事業についてもお知らせが載っていた。

●経済産業省「コンテンヅ緊急電子化事業」の申請条件の緩和について
1.第一次申請締切は9/14でしたが、第二次出版社申請受付け期間を10月1日(月)から11月30日(金)とし、募集します。
2.タイトル申請数の上限を廃止します。出版社の昨年の新刊発行点数の2倍までを廃止。
3.図書館への図書寄贈の緩和−3冊献本を義務としていましたが、「可能な範囲で寄贈」に改めます。
4.ePub3の申請に対応します。
5.電子化事業の制作会社の出版社指定が可能になりました。
  詳細は「JPO出版インフラセンター」のホームページをご覧ください。


 この3番目の項目、図書館への寄贈が、ちょっと気になるので、また、あらためて考えたい。
 電子本になったら、図書館はすべて「所蔵」するのかな、ということです。
 紙の本の寄贈では、じつは、国会図書館以外の図書館は、出版社から寄贈された新刊本を必ずしも蔵書しないということを、つい二、三年前に知った。ときには、寄贈された本を、そのまま、廃棄処分にすることもあるようだ。
 その実状を知った時には、驚くとともに、腹が立ったけれど、そのことは、もうちょっといろいろなことを調べて、いずれまたふれたいと思います。
   
タグ:書店
posted by Office KONDO at 01:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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