2013年05月11日

京都にハルキがやってきた!

旧暦四月二日 丁丑(ひのとうし)

 「村上春樹が京都に来てたんやってねえ」とかみさんが珍しいことを言う。
 京都大学で講演したって、ニュースでもやってたでしょ。
 どうも、聞きに行きたかったらしい。
 へえ、関心有るの?
 これからの日本を救うのは、山中伸弥さんと村上春樹さんだと思う。
 って、どうやら何かテレビで見たか、雑誌でも読んだな。(笑)
 抽選だったけれど、はずれた人も会場のそばまで行く熱心さだったらしい、と言う。
 自分でもそうしたかったのかな。だけど、ほかの講演会なら行ってしまえば無理して入れてくれる可能性があっても、ハルキじゃ無理だろう。で、そんなに好きなの? 彼の小説、読んだことあるの?
 読んでないけど・・・
 案の定。(笑)

 そんでもって、村上春樹は、講演の前に鴨川を走っていたらしい。
 へえ、それは知らなかった。
 すごいやん。
 何が?
 いつもそうして走っているらしい。
 いや、走るやつはいっぱいいるだろう。それに、健康に気を配りながら原稿を書いている作家、って、どうなの?(笑) 

 ノーベル賞候補として、このところ毎回その名が上がり、ことに、最近の「落ちぶれた」と思われ続けてきた日本にあっては、希望の星のような扱いをされて、おそらく、本人にとっては文学の本質以外のところで知名度が高まり、小説が読まれ、評価がされるようになってきていることだろう。
 だから、国内に住まないのかもしれない。
 まあ、本人は、日本を意識しているだろうけれど、文学世界に国境などないし、ことさら日本人でありたいとは思っていないだろう。
 それでも、まわりは「日本人」として期待するのである。

 だけど、「救う」のはどうか・・・
 山中伸弥さんは、そりゃ人間的にもすごいと思うよ。近年、金ばかり儲けたがる研究者の中にあって、私を捨てて公に尽くしている印象が強い。まれにみる人ですよね。でもまあ、分野が違うこともあるけれど、村上春樹さんに、文学を以てして日本の未来に貢献しよう、なんて意識があるとは思えないし、文学者がそんなことを言いだしても逆に気持ち悪いだろう。

 社会人になってから、小説を読むことは滅多になくなったが、二十代だったかに、彼の短編集を読んだことがある。内容はもう忘れたけれど、その感覚がいいなと共感を覚えたことはなんとなく印象に残っている。
 だけど、次にまたどうしても読みたい、という渇望は無かったから、自分でもその後読んではいないのだろう。最近話題作が(というより、話題が先行した新作が)何年かごとに発表されて、書店の店頭で手にとってみたけれど、それを買って読むだけの、魅力と、気力が、持てなかった。長編だものね。
 読みたい、と思う物語は、ちょっと何ページか拾い読みすると、言葉の連なりがきゅっ、とひっかかる時があるのだ。それはなかった。なにか平凡な気がした。
 おそらく、その平凡な言葉の膨大な組み立てに、彼の独特のプロットが潜んでいるのだろう。読んでもいないのにすみません。

 じつは、それまで、あまり意識していなかった村上春樹さんという作家に、どこか、もやもやとしたものを感じたのは、フクシマの原発事故のあとのことだ。
 東北の大災害にふれた、 スペインでの講演は、ちょっと何か違和感を覚えた。
http://kyotohansokutsushin.seesaa.net/article/215040188.html
 マスメディアはみんな、ノーベル賞候補である世界的作家の話に、何かすごい意義を見出そうと一所懸命だった。
 うーん、どうなんでしょう。それまでのことをあまり知らないので、こんなことを勝手に言ってはいけないかもしれませんが、事故があってはじめて原発にふれ、まあ、下世話に言えば反対の意志を表明したようにみえた。

 すでに受賞している大江健三郎さんは、早くから、というか、根っから反対を表明してきた。沖縄の問題にも取り組んできた。告訴までされた。
 別に運動家として声高に叫んできたわけではない。だけど、その声は多くの人に届いている。
 大江さんは、ノーベル賞を受賞したけれど、確か文化勲章は辞退している。

 書き手としての文学者にとっては、「何をどう書くべきか」が最大の課題だ。そこに技術としての方法論が加わる。
 それは、生き方の問題ではないかと思う。当然ですね。だから、自己の文学に行き詰まって自殺した作家は多い。

 芸術家は作品がすべてという意見がある。もちろんそのことに異論はない。だけど、作品を産むのは、その書き手であり、書き手の生き方である。
 ほとんど関心を持ってこなかったので、村上春樹さんが、どういう人生をたどってきたのか、私人としても公人としてもよく知らないのです。すみません。
 だけど、あれほど、みずから孤高の位置を保持しようとしている人について、ウチのかみさんのように読んだこともなく、ふだん文学と縁もゆかりもない人間が、日本を救う人だなどと口走るのを耳にすると、えっ? と、立ち止まらざるを得ない。この人がどんなふうに生きてきたのか、少しくらい検証する必要があるのかな、と考えてしまうのだ。
 
ラベル:村上春樹
posted by Office KONDO at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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