旧暦閏五月二十七日 乙丑(きのとうし) 土用 土用の丑
山鉾巡行は終わりましたが、まだまだ、祇園祭はいろいろやっています。ぜひ京都にお越しください(笑)。
宵山の日には、ジャーナリズムからみの裁判のニュースが、ふたつ続きました。
ひとつは『週刊現代』が、キャノンと御手洗会長から訴訟を起こされていた名誉毀損? の控訴審で、キャノン側が逆転敗訴した、というもので、もうひとつは、評論家の田原総一郎さんが、拉致被害者の有本恵子さんのご両親から慰謝料請求の訴訟を起こされた、という、ちょっとした驚き。
キャノンの話は、該当する誌面を見ていないのでよくわからないけれど、どうやら『週刊現代』の広告、つまり、電車内の中吊りや、新聞の記事下に掲載される「今週号」の見出しを一覧した広告の中に、御手洗会長が、戦時中の日本軍「七三一部隊」と関係があったと「誤解されるような表現」があったとして、名誉を傷つけられたと、2億円の賠償を求めたらしい。
一審では、発行元の講談社と記事を書いた斎藤貴男さんに200万円の支払いを命じたが、東京高裁はこれを取り消し、棄却した、ということである。
このところ、次々とメディアの失態や敗訴が相次いでいた。
まあ、どちらかといえば、ちゃんとしたウラをとらず、極端な例では、『週刊新潮』の、赤報隊の実名告白! なんていう(読もうとも思わなかったけれど)、絵に描いたようなガセネタは、いい例だし、大相撲の八百長、というのも、事実かどうかということより、突っ込まれたら証明できないだろう、という話だった。
そんな、みずから墓穴を掘るような話で、次々とメディア側が敗訴していくのをみていると、全体のレベルが下がり、弱体化したジャーナリズムの隙をついて、権力が一気に巻き返しに出た、というような雰囲気さえ感じられていた。
キャノンの件は、派遣問題などで、いろいろとマスコミから批判を受けてきた御手洗さんの、いわば脅しのような裁判でしょうね。御手洗さんが何かで2億円請求されたのかと思ってよく見たら、2億円請求していた、という記事で、驚いたものだった。
この、キャノン側の逆転敗訴では、メディアたたき、ジャーナリズムつぶしに、ちょっと、歯止めがかかったのかもしれない。
戦時中、生物・化学兵器の研究を行ない、石井部隊とも呼ばれた七三一部隊は、中国人の捕虜に生体実験を行なうなどの残虐行為で知られるが、キャノンの御手洗さんが関係したなどというと、なんとなく、専門違いでもあるだろうし、ちょっと強引? とも思うのだけれど、そんなに過剰反応したのならば、じつは何かあるのかな、と思ってしまう。
おそらく、まだ、最高裁までいくのでしょう。まあ、こちらは、よくわからないので、これからの進展をみるとして、つねづね思うのは、裁判員制度までやろうというのなら、なぜ、公判記録をネットで公開しないのかな、ということ。
気になるのは、もうひとつのニュースのほう。
田原総一郎さんが、拉致被害者の有本恵子さんのご両親から慰謝料請求の訴訟を起こされた、「有本恵子さんと横田めぐみさんが生きていないのは外務省もわかっている」という発言は、そのとき録画をしておいて見た「朝まで生テレビ」で、鮮明に記憶に残っている。
録画したDVDがまだ残っていたかどうか、探してみようとして、あ、そうそうと思い返し、ユーチューブで「田原総一郎」と検索したら、ちゃんとその時の一場面がアップされていた。
その動画のURLが、コピペしても、うまくつながらないので、ユーチューブのトップのURLです。↓
出てくるユーチューブの画面、右上の枠で「田原総一郎」と入れて検索すると、おそらく、いちばん上に出ます。
http://www.youtube.com/ 田原さんは、番組の中で、外務省のナンバー2だかナンバー3に話を聞いたというようなことを言っているが、これが当の発言の根拠となる取材源かどうかは少し不明瞭だ。
例によって、テレビのニュース番組や、新聞など、それぞれ微妙に事実表現が違うので、これもちょっとわかりにくいのだが、裁判では、取材テープを提出してもいい、というようなことを田原さん側が言ったと、一部で出ていた。
これは意外で、ちょっと問題ではないか。
ことは、個人的なやりとりのいきさつではなく、歴史的事実として明確でなければならない、外交上の記録といっていい話である。客観的に証明されなければならない。
また、一方で、取材源の秘匿、というのは、ジャーナリストにとって生命線といえる原則である。相手が、いかに外務省のくだらない官僚だとしても、簡単に「ネタもとはこいつですよ」と首を差し出すのは、弾圧下の密告と変わらない卑劣な行為である。
あの田原総一郎、が、そんなことを本当に言ったのだろうか、と、驚いてしまう。
もし、ニュースの誤報だとしたら、逆に、ジャーナリストにとっては、それ自体が、先のキャノンどころか、まさに「名誉毀損」での提訴となるべきだろう。
もうひとつ気になるのは、この件で、有本さん夫妻は提訴したが、同様に「死亡」と言われた横田さん夫妻が、一緒に提訴していないようだということ。その意見の違いがあるのだとしたら、知りたい。
ただ、いずれにしても、田原発言は、不用意だったのではないかと思う。
ジャーナリストは、真実を探り、伝える必要がある。
それが、決定的に不正を暴いたり、誤解されている事実を正したりすることで、誰か不利益を被っている人を救うという意義があれば正義であるし、本分である。
だけど、そのことで、今、不当に虐げられたり、不利益を被っている人が、よりその被害を増すような条件であれば、その伝達は控えるべきだろう。
たとえば、人々が弾圧されている強権国家で、抵抗して闘っている人の住まいや組織や戦略をあからさまに伝えたとしたら、いかに弾圧する側を利するか、というのは、火を見るより明らかだろう。それは、後に、彼らが安全になってから、正確な事実を残せばいいことである。
要は、ジャーナリズムは、誰のためにあるものなのか、ということではないか。
同時に、不用意で、思慮のない発言のしかたをしたとはいえ、事実関係というより感情論で、有本さん夫妻が、ジャーナリストを提訴したことにも、ちょっと、ためらいを感じる。田原発言は、事実以前に、言うべきではないし、今、言う必要もない発言だと思うけれど、ことがことだけに、ジャーナリズムに対してのプレッシャーは、大きいと思う。
拉致問題は、日本人にとってだけでなく、人間として、何より許せない。
個人的には、義勇軍をつくって、奪還に動くべきだと考えている。
空想的かもしれないが、今、定年を迎えつつある団塊の世代などは、人口も多いし、かつては北朝鮮賛美をしていた中心世代でもあるのだから、みんな、捨て駒として、北朝鮮に上陸して、人海戦術であの理不尽なヤクザ政権を滅ぼせばいいのだ。
だいたい、日本をおかしくした責任世代だし、金ちゃんと差し違えて滅びたら、あとの世代の年金もラクになるしね。
すみません。(笑)
それでも、やっぱり、有本夫妻が、おそらく提訴せざるを得なかったのだろうと想像する経緯は、違うかたちで、お互いの気持を通じ合える話ができなかったのかな、と、思ってしまって、気にかかる。